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月刊未来経営

旬の事業機会の裏に勝機あり

先月号で戦略の本質は競合他社との「違い」をつくることにあり、その「違い」は長期的な利益をもたらす「良いこと」でなくてはいけないと書きました。
たとえばインバウンドの外国人観光客、民泊、爆買いなどは今まさに光まぶしい旬の話です。そこに事業機会は山ほどあり、ここで「差」を作れば大儲けは間違えありません。しかしそう思う人も多いためプレーヤーが殺到し、場合によっては巨大資本の参入も不思議ではありません。そうなるとその競争は激化し、ちょっとした差は長続きしません。

そこでここに『ひねり』が必要になります。
「クールジャパン」の日差しを受けて、民泊や爆買いというキラキラ光る事業機会を取り込もうという企業が多い中で、「ファクトリエ」は衰退著しい日本のアパレル工場といういわば「日陰」に着目し、Made in Japan復活を掲げて、その技術を活かしたこだわりの製品を工場直販で販売することに特化して高収益を誇っています。表面的には小売業ですが、衰退しつつある製造業者に経営指導をし、工場直販ですから消費者には最高の品質のものを安く売り、逆に工場からは高く購入し、サプライチェーンを再構築していることに戦略の妙味があります。小回りが効くことから全国400以上の工場に社長が直接訪問しており、他社がその美味しさに気づいた時にはじっくりと固めた先行者優位が効いているという寸法です。

成熟化でめぼしい事業機会が少なくなるほど日向である旬の事業機会の誘因は大きくなります。そして多くのプレーヤーが殺到し、競争は激化します。一方で日陰には資源投入に積極的なプレーヤーは少なく、競争は緩く、差別化への資源投入に対するリターンも大きいです。しかも日陰は時間を稼ぎやすく、ライバルが参入を忌避する中で、じっくりと先行者有利を固められます。目先のキラキラした事業機会をおいかけるだけの手なりの経営では長期利益はおぼつきません。事例までの『裏』でなくても、自社にとっておいしい『日陰』を探す、商機と勝機はそこにあります。

(日本経済新聞 2016年5月25日 経済教室 楠木 建氏の記事を参考にしました。)

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