持続的競争優位
一橋大学の楠木教授によると、儲かっている企業には2つのタイプがあるそうだ。
一つは大きくなっていくマーケットの追い風にのって、次々に生まれる事業機会を早く確実に捉えて、先行者優位を積極投資により獲得し儲ける企業である。新興国などで急成長しているタイプの企業だ。典型的な企業は鴻海(ホンハイ)である。しかし残念ながら日本では一部を除き、この手の風はあまり吹いていないと思う。
もう一つは企業内で差別化された顧客価値を作りこんで、自ら顧客を作りこんでいくタイプの企業である。このタイプの企業は、景気の浮き沈みや市場の縮小などの影響を受けないわけではないが、そもそも推進力は外部からの追い風ではなく、企業内部での価値創造なので、その影響は少ない。典型的な企業はキーエンスとか、ユニクロとかである。
後者は次の5つで特徴づけられるそうだ
- 立ち位置(事業領域)を明確に絞りこみ、
- そこで一貫した戦略ストーリーを持ち、
- 競合他社と差別化した独自の顧客価値を創出し、持続的競争優位に立ち、
- それゆえ長期利益を稼ぎ、
- 結果として成長を実現している。
たとえばユニクロを例にとれば、ユニクロのお客様は決してオシャレを決め込みたい人たちではない、実用的な生活部品としての服に軸足を置き、大量生産をテコに品質や機能を継続的に進化させていくことにより、明らかに他のファッションメーカーとは違うポジションを維持しつづけ、他者の追随を許さず、長期利益を稼ぎ、結果として成長を実現している。
ユニクロを例に出したが、なにもこの手の企業は規模の大小は問わない。あなたの属している業界にも「あそこは業界の中でもちょっと異色なんだよ」という優良企業はいると思う。その企業はだいたいこれだ。もし自社がレッドオーシャン市場の中で、出口が見えない疲労困憊の戦いを続けているとした場合、少し立ち止まって、競合他社と差別化した顧客価値を作り、
「あそこはちょっと業界で異色なんだよね」と言われることを考えた方が良い。
(参考文献:戦略と経営についての論考 楠木建 日本経済出版社)
【文責:飯沼 新吾/プロフィールはこちら】