仮説と検証とそのスピード感
あたりまえの話だが実践問題には、絶対的な正解というものが存在しない。
例えば、今どこの企業においても懸案事項であるDX化についても「こうすれば必ず改善する」という絶対的な正解はない。たとえそれが同じ業種の、同じサイズ感の企業で成功したやり方を導入したとしても、必ずうまく行くとは限らないのである。
ではどうするか。
一般的に考えると情報収集、調査、分析をして、正解を絞り込む…のであるが、それは程度ものである。ここで精度を高めても、しょせんは「正解かもしれないもの」だからである。ここに大きく時間とお金とエネルギーを注ぐことは全くお勧めしない。
調査・分析で、ある程度の精度を得られたならば、仮説を立てて、組織を巻き込み、すぐに実行に移すことをお勧めする。実行に移さねば何も変わらないし、仮説で動いて失敗したとしても、それが組織としての次への経験となるからである。
このように軽く失敗を繰り返し、失敗→失敗→失敗→失敗→成功を探り当てる行動は、企業風土としてとても重要なことである。それを良しとするマインドセットと、失敗しても成功に向かって立ち上がる熱量が組織に常在しているからだ。サントリーでいうところの「やってみなはれ」という企業文化だ。
この件はDX化に限らず、経営に関しても同じである。
ベテランカリスマ経営者は、調査・分析の時間が異様に早く、立てた仮説の正解率が異様に高い。例えば売り場に10分ほどいるだけで、ここのレイアウトがここの客層に合っていないと言い始め、実際に変えてみると途端に売上が改善するといった具合だ。
しかしこれにひるんではいけない。これは彼の若いころからの仮説検証から得た、経験値の結果だからだ。だからこそ次世代の若い経営者のたくさんの失敗が重要なのだ。仮説と検証とそのスピード感が、次世代の経営者と組織を育てると思う。
【文責:飯沼新吾/プロフィールはこちら】