手形期間60日に短縮
以前から検討されていた手形期間の短縮について、各省庁から令和6年4月30日に正式に通知が出ました。今年11月1日以降に交付される、期間が60日超の手形は割引困難な手形となり、下請法に違反するおそれがあるものとされ指導対象になります。同時に建設業法で規定されている割引困難な手形も同様の運用変更となり、なおさら遵守が必須となります。なお電子記録債権であっても同様の指導がなされます。
中小企業庁の調査によると建設業者の約3割が手形等による支払いを行っているとのことです。手形の利用を廃止する予定がない理由としては「資金繰りがつかないため」が最多です。中でも建設業は他の業種平均よりも資金繰りを理由とする割合が高くなっています。着工から代金回収までに長い時間を要する業界特色が支払手形に依存する大きな原因となっています。
また同調査によれば、90日以内または120日以内を期間とする手形が全体の7割を占めています。期間を120日としている手形を60日に短縮するとなれば、売上2カ月分相当という巨額の運転資金を別の方法で調達する必要がでてきます。真っ先に検討されるのは銀行融資かと思います。ただ資金繰りに窮しているとなれば即座に必要な融資を受けられるとは限りません。代金回収までの期間に運転資金として必要となる適正額を確認し、必要に応じて中期経営計画や資金繰り表の作成に着手しましょう。
手形の期間短縮とは話が変わりますが、紙での約束手形および小切手は2026年を目途に廃止され、全面的な電子化(電子記録債権など)が予定されています。こちらは中小企業のデジタル化がネックとされています。
手形の期間短縮、そして紙での手形廃止。どちらも遠い未来の話ではありませんので今から自社での手形活用を見直してみてください。
【文責:鍵田貴之/プロフィールはこちら】
参考:中小企業庁 令和5年度取引条件改善状況調査