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月刊院長先生

事業承継・廃業によるカルテの管理

令和5年1月10日の医業タイムスにて、令和4年の医科診療所の開業件数が掲載されていました。長野県内は前年に比べ3件減少した21件で、直近の10年間は毎年20件前後で推移しているとのことです。厚生労働省が公表している令和3年の統計調査では、県内の医科診療所の施設数が、平成23年1553施設、令和3年1605施設と10年間の間に増加しておりますが、毎年の開業件数を考えると閉院等される診療所も少なくないことが考えられます。

いわゆる2025年問題等で、後期高齢者は増加し医療を必要とする世代が増加していくことが予想される一方、医科・歯科診療所・薬局は院長や管理者の高齢化や人材不足に依って廃業が増えていくことが予想されます。そのような状況の中で、弊社でも事業承継やM&Aの相談も増えてきています。そのような場合、医療機関の「カルテの承継」が個人情報保護の観点から気になる先生方も多いのではないでしょうか。

ポイントとしては①引き継ぐことは可能か?②管理者の移行は?③個人情報保護の問題は?点が挙げられます。①と②は厚生労働省のガイドラインがあり、引継ぐことは可能であり、引継いだ新しい管理者にカルテの保管義務が発生するとされています。③は個人情報保護法第27条第5項2号に依って、本人(患者)の同意がない個人情報の譲渡でも事業の承継に伴って個人データが提供される場合には可能とされています。

ただし、同法第16条2項で当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて利用してはならないとされていますので、診療行為以外には使用できません。

承継せずに閉院に至る場合には閉院後もカルテの保管義務が発生いたしますのでご留意ください。なお、保管義務は一連の診療が完結したときから5年間とされています。保存期間が終了した後のカルテの廃棄についても、個人情報に配慮した廃棄方法が求められますのでご注意ください。

(参考:厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」)

【文責:山口愛敬/プロフィールはこちら

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