技術の承継こそ競争力の源泉
ある設備工事のお客様が周辺工事を新たに受注し始めました。その施工技術をどこで身に着けたのかお聞きすると、業者会仲間の工事現場に同行し、タダで働く代わりに工事のやり方を教わったそうです。このような技術力は会社の決算書のどこにも表示されません。しかし技術力こそ会社の重要な資産であり、競争力の源泉であることは間違いありません。
技術の承継について考えてみましょう。建設業には多くの熟練の技術者がいるものの、高齢化に伴い次の世代への技術承継を悩まれている方も多いかと思います。技術承継の課題として挙げられるのが指導時間の不足です。若手がベテランの仕事を見て盗むというのは簡単ではありません。承継には丁寧に指導をする時間が不可欠ですが、日々の業務に追われ業務時間中に若手指導の時間を取ることが後回しになってしまいがちです。特に近年は働き方改革により労働時間も削減される傾向ですので、残業して指導という方法は難しいでしょう。
ではどんな教育方法があるでしょう。昔から言われる手法ではありますがマニュアルを本気で作成してみることも一考の価値があると思います。マニュアルと言っても単なる文章だけでなく、例えば動画を取るだけで簡単にマニュアル共有ができるシステムを利用するなど手間をかけ過ぎずに作れるものが主流です。丁寧な教育の土台を作る、そういった考えを持つ企業に求職者が集まり技術が次の世代へと受け継がれていくのかもしれません。
建設現場でのベテランの経験や細かい肌感覚はマニュアルに落とし込むことが非常に難しいものですが、マニュアルで基本的な知識を頭に入れた状態で先輩から教わることで教育時間の短縮につながり、時間的にも精神的にも先輩・後輩、双方の負担が減るはずです。弊社も数年前にteachme bizというマニュアル作成ソフトを導入し、現在200件超の作業マニュアルが作成されています。こういった地道な技術・知識の承継が見えないところで競争力に繋がっていけばと思います。どうぞご一考ください。
【文責:鍵田貴之/プロフィールはこちら】