記録は事業所を守る
厚生労働省は令和4年3月に、それまでは都道府県または市町村により行われてきた運営指導を標準化・効率化するために、「介護保険施設等運営指導マニュアル」を公表しました。このマニュアルには別添資料として「確認文書・確認項目一覧」が備えられています。「確認文書・確認項目一覧」は介護サービス種別ごとの確認項目が、例えば平面図、重要事項説明書、居宅サービス計画書、個別支援計画書などの確認文書により裏付けされているかをチェックする構成となっています。確認文書自体が存在しているか、ということはもちろんのこと、確認文書に記載された記録と提供サービスの整合性がとれているか、ということが重要なチェックポイントの一つとなります。そこを適切に対応できていないと、運営指導の結果、介護報酬の返還につながってしまうことが考えられます。
例えばサービスを提供する際にはケアプランや利用者へのアセスメントに基づいて、各介護サービス事業所が個別支援計画書を作成し、利用者に説明します。最終的にその計画書に利用者や家族が同意・署名し、利用が始まります。運営指導の際は、その個別支援計画書に利用者の署名があるか、記載されている日付はサービス提供日よりも前の日付となっているか、説明し同意を受けた事実が業務日誌に書かれているかなどがチェックされます。もし、個別支援計画書に記載された日付がサービス提供日よりも後の日付だった場合は、利用者の同意日よりも前にサービスが提供されたとみなされ、その分は報酬を算定できずに返還の対象となってしまいます。このように記録自体の存在とその整合性が問われる形となります。
運営指導は指定の有効期間(6年)の内に少なくとも1回は実施されます。特に指定更新の前1年間が最も多い傾向にあります。事業所の安定した運営を維持し、サービスの質を確保する上でも記録とその整合性を確認し、要件を満たすものとなっているかを定期的に社内で確認することが必要だと思います。
【文責:高橋大輔/プロフィールはこちら】