介護保険市場規模11兆円超
厚労省は8月31日、2020年度の介護保険の費用額が11兆542億円で前年度から2.7%増加したと発表しました。従来の予想通り順調に介護市場規模は拡大しています。
一方、介護事業所数に目を転じると順調とは言えない状況となっています。介護サービス施設事業所調査によると介護事業所数は2016年あたりから横ばい、または減少に転じています。特に介護業界を牽引してきた居宅介護支援事業所、通所介護、訪問介護の事業所数が減少傾向にあることは気になります。市場規模が拡大しているのに事業所数が増えない原因は経営環境の悪化が考えられます。
介護報酬改定により利益率は年々悪化しています。通所介護は10年前、平均10%以上の利益率がありましたが今では3%程度です。さらに人材確保が難しくなっています。介護労働実態調査によると80.6%もの事業所で訪問介護員が不足していると回答しています。このように経営環境が厳しくなり新規参入の魅力が減少している事が一因と思われます。
今後、生き残る介護事業所になるためにはこれらの問題に対応する必要があります。そのカギとして教育研修、介護ロボットが考えられます。介護労働実態調査では資格が重要な業界であるにもかかわらず、採用時に資格にこだわらないとした事業所は42.2%もあり、応募してくれる人材は採用しようという思いが感じられます。
そうなると教育が重要ですが、教育研修計画を立てている事業所は56.3%で半数近くの事業所は計画的な教育研修ができていません。また、人材が不足し利益率が悪化している状況の改善に機械化は重要なカギになると思います。しかし、見守りセンサーなどの介護ロボット導入状況では80.9%の事業所が導入していないと回答しています。
介護保険市場が拡大傾向にあり、新規事業所数も増加していない状況は普通に考えればチャンスと言えます。人材不足などの高い壁を乗り越える事ができれば違った景色が広がると思います。
【文責:竹内光彦/プロフィールはこちら】