年1回の貴重な経営情報
経営者が毎月の損益を把握し、これを分析して次の戦略を組み立てることは大切ですが、建設業に関して言えばそれは簡単なことではありません。受注金額は工事毎に様々であり、工期が複数月にまたがる現場があれば単月での損益の分析は非常に困難です。
ただし決算書となればどうでしょう。棚卸や仕掛工事について合理的に計上されていれば、1年間の損益や利益率を正確に把握することができます。当たり前の話だと思われるかもしれませんが、この1年間通した最終的な損益や工事の平均的な利益率は非常に重要な経営情報です。例えば見積り時に想定していた利益率、工事台帳で管理している利益率と意外なズレが見つかったりします。そして大切なのがこの最終損益についてですが、「予想していた通り今期は黒字だった」「税金がいくらかかる」で終わるのではなく、次のポイントを是非確認してみてください。
【キャッシュベースでも必要利益は稼げているのか】
特に借入金がある会社は要チェックです。キャッシュを減らさずに借入金を返すためには税引き後の利益が年間返済額を上回る必要があります。年間200万円返済するなら利益 300万円を稼いでやっと返済分の利益、つまりキャッシュでトントンとなります。借入金の返済や減価償却費がある場合、利益=キャッシュ増加額ではありませんので、決算では損益だけでなくキャッシュフローの確認が重要です。
【長期的な計画での達成度】
企業の成長には長期的な見通しが大切となってきます。単年度での損益だけに気を取られるのではなく、企業の目指す姿・目標を5年計画など長期的な経営計画を作成して数値に落とし込みましょう。企業ごとに確認すべき項目は異なりますが、今どの段階まで達成できているのかを考えることで、来期以降すべきことが明確になります。
誰もが作成する年1回の決算は、非常に重要な情報の詰合せです。経営についてじっくりと検討する機会としてより一層ご活用ください。
<文責:鍵田 貴之/プロフィールはこちら>