「失敗は成功のもと」を科学する
2013年、玉川大学の研究者らが大変興味深い論文を発表しました。それは「失敗」はどうすればポジティブな出来事として受け入れられるかというものでした。
彼らは研究のために、ストップウォッチを使って5秒ぴったりに止めるゲームを実験参加者にチャレンジしてもらいました。そのとき参加者たちは2つのグループに分けられました。
- 第1グループ ゲームのためのストップウォッチを自分で選べる(自己選択)
- 第2グループ ストップウォッチをランダム割り当てられる(強制選択)
このとき参加者の頭には、ゲーム中に脳がどのように活動するか調べるセンサーが取り付けられていました。するとゲームが成功したときには、第2グループ(強制選択)の「やる気」にかかわる脳の部位が活性化されました。しかし失敗したときは著しく低下し、逆に第1グループ(自己選択)の「やる気」は活性化されたのです。
そしてゲームを何度か繰り返すと、第1グループ(自己選択)の方が明らかに良い結果を出したのです。つまり、自分で選んで行動したという”自己決定感”という感覚があると、失敗してもやる気を失わず、次の糧にしようとする心の働きが生まれてパフォーマンスがアップしたということです。
たかがストップウォッチを選べたかどうかという程度にもかかわらず、これだけの差が生じたことには驚きです。
よく「失敗は成功のもと」といいますが、強制的に他人から与えられた条件下では、あまり効果はなさそうです。逆に、たとえストップウォッチのようなささいなことでも自分の意思でやり方を決めることができると、失敗から学び次に活かそうとするのです。
文責 髙山 正