戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る
戦史家の多くが「戦争のプロは兵站(へいたん)を語り、素人は戦略を語る」と口にするそうです。兵站とは前線への食糧や武器弾薬の補給、整備、兵員の展開など、軍の後方諸活動を総称したものです。
なるほどそう言われると、スポーツ観戦のあと、今日勝った理由は、監督のあの時の指令だと、試合中の出来事をワケ知り顔に語る素人ファンの姿が思い浮かんでしまいますが、プロはチームの資金作りから始まって、強い選手、強いチーム作りに向けた試合以前のことに目が行くということでしょうか。
これは経営においても然りで、「経営のプロは管理を語り、素人は戦略を語る」のだと思います。フロントである営業や生産の最前線でどう動くのかという戦略も重要ですが、バックである管理を怠ることなく、強い従業員、部門、体質を作りこむことが重要というわけです。
特に中小企業の場合は、自社で立てた戦略、方向性が、外部要因で捻じ曲げられることは日常茶飯事です。したがって(少なくとも短期的には)戦略そのものの良さよりも、ミドルマネジメントの強さで儲かる、儲からないが決まってくると経験的に感じています。
たとえば営業で言えば、自社の強みを理解し、会社全体としてどう動くのか戦略を立てることも重要ですが、戦略の有無にかかわらず日常的に営業がキチンとやらなければいけないことを丁寧にこなし、癖にしてしまっている企業、また部課長がそのマネジメントをキッチリやっている企業が強いというわけです。客先の要求を的確に掴み、社内関係者に正確に伝えるとか、クレームがついた時の処理の素早さとか、数字が出ないときにその分析を丁寧にやり、対応策についてスピード感をもってやりきれるかとか、もっと言えば挨拶がキチンとできるかとかです。
だから戦略なんかなくても良いわけでは決してないです。ですが中小企業におけるミドルマネジメントの重要さは、それと同じくらい重要なのだと私は思います。
(文責:飯沼新吾)