大変な仕事も最初だけ
仕事に手をつけた、それで半分の仕事は終わってしまったのです
「デキムス・アウソニウス~ローマの著述家」
慣れない仕事や面倒な仕事はついつい後回しにしてしまいがちです。しかしいざ手をつけてみると、意外とあっさり終わってしまったという経験はないでしょうか。手をつけるまでが億劫で一度始めてしまえば、存外すんなりいくものなのです。
それは、科学反応が起きるときに必要とされる「活性化エネルギー」にも似ています。最初に科学反応を起こすのに必要なエネルギーは、その変化を維持するエネルギーよりもずっと多くを必要とします。最初がもっとも大変で、その後はまるで氷のリングを滑るかのように、力を使わずに進むことができるのです。では、どうすれば活性化エネルギーを乗り越え、行動へと変えることができるのでしょう。その答えは「やろう」と思ったらあれこれ考えずにすぐ始めることなのです。
人がなにか行動を起こそうとするとき、二つの思考が働きます。ひとつ目が「熟考的マインドセット」と呼ばれる状態で、それを始めるか、後回しにするか、あるいはやらないかを天秤にかける思考です。それに対し、「実践的マインドセット」とは行動することを決め、実行に移す思考です。ポイントはこの熟考的マインドセットで行き詰ることなく、実践的マインドセットに移行することです。
ところが人は活性化エネルギーを必要とするような大変な仕事を目の前にすると、熟考的マインドセットが働き、自分をだましてでもやらない理由をいくつもつくり出してしまいます。そうならないためには、熟考的マインドセットが働きだす前にすぐ始めてしまうことです。パソコンの電源を入れる、本を開く、そんなことで構いません。その程度のことであれば、エネルギーはあまり必要としません。でも一度始めれば、あとは勝手に進み出すのです。
文責 髙山 正