両利きの経営
「両利きの経営」という言葉をご存じでしょうか。たぶん初めてだという方がほとんどではないかと思います。
さて、あなたはある新聞社の社長です。その新聞は県下のかなりの家庭で定期購読され、新聞に係る広告事業、印刷事業その他の事業も傘下の企業で行い、つまりその新聞から上がる収益がすべて自分の掌中にある状態です。一方で世はネット時代です。当新聞は、今は「かなり」ですが、かつては「ほとんどの」家庭で読まれていました。いまでもメディアとしての地位が県下一であることは間違えないのですが、その発行部数は徐々に減り、地力は落ちつつあります。
この状況において社長である貴方の決断はどうでしょうか。
- 基本的にネットで儲かるとは考えにくい。新聞事業の黒字も大きい。鉄板である本業の新聞を中心に事業効率を上げ、既存サービスの磨きこみをし、事業の再編を図る。
- 残念ながら新聞事業は先が見えている。チャレンジングではあるが軸足をネット事業に移す覚悟で、ネットに本気で飛び込み、新聞を含めた新たなメディアミックスを確立し、再度の絶対王者を目指す。
どちらが正解なのかは分かりません。両方不正解かもしれません。が、仮に2を選んだ場合は、社長にも厳しい風が吹きます。なぜなら儲かっている部門からみれば、チャレンジングな新たな商売はただの金食い虫に見えますから。そんなリスキーでコストばかりかかることなど止めてしまえと社内から相当圧力がかかるはずです。
でもどんな鉄板事業にも終わりがあります。だからこそ鉄板の事業が儲かっているうちに、金がかかってリスキーな事業でも、両方を高い次元でバランスを取りながら、何とか未来の金脈を掘り当てるんだという強いリーダーシップが必要となります。この両事業をやり切る経営を「両利きの経営」と言います。これをうまくやりぬいた企業には富士フィルムなどがあります。
さてこの新聞事業を自社の鉄板事業に置き換えたとき、あなたはどうされますか。
(文責:飯沼新吾)