限界を超えろ~短時間で成果を上げる方法
「ビジョナリーカンパニー4~自分の意思で偉大になる」の共同著者としても有名な、経営学者のモートン・ハンセンは、某大手コンサルティングファームに勤務していたころ、その後の彼のキャリアに大きな影響を与える衝撃的な経験をします。
彼も他のコンサルタントよろしく、毎日早朝から夜遅くまで週60時間以上働く生活を送っていました。そんなある日、厳しい買収プロジェクトに悪戦苦闘していると、ある女性のスライドが目に入ってきました。そのスライドは、簡潔明瞭でアイデアに溢れ、説得力があり、明らかに自分の資料より優れていたのです。しかし、それ以上に彼を驚かせたのは、彼女が毎日定時で上がり、仕事の持ち帰りも、ましてや休日出勤もしないことで有名だったからです。
彼はこの経験を忘れることができず、コンサルティング会社を退職後、経営学者の道に進むと「なぜ、短い時間でも高い成果を上げられるのか」研究に取りかかりました。そこでわかったことの一つが、「目的のある練習」をしているかどうかにあったのです。
「目的のある練習」とは、言葉のとおり明確な目的を持って取り組んでいることを指します。「うまくやろう」という意思をもって取り組まなければ、ただ同じことを反復継続しても、一定以上には上達しないことを、心理学者のアンダース・エリクソンは研究から明らかにしました。
例えば、あなたは毎日車に乗り、免許を取得してからもうすでに1万時間以上運転したかもしれませんが、いまだF1ドライバーにはなれていないはずです。毎日家族のために料理をつくっている主婦が、一流シェフになれないのも同じです。ただダラダラと繰り返しているだけでは、何時間取り組もうが、一流になることは決してないのです。
あたり前のことにように聞こえるかもしれませんが、これは意識しなければできません。なぜなら「目的のある練習」は、コンフォート・ゾーン(心地よい領域)を超えて、自分の限界の少し上のことに挑戦することだからです。しかし意識し、集中して、自分の限界を超えようと取り組めば、たとえ短い時間であっても高い成果を上げることができるのです。
(文責:髙山 正)
参考文献:髙山正著「アジャイル型人事マネジメント」