ルーティンワークは漸進的イノベーションの秘策⁉
みなさん、「ルーティンワーク」という言葉にどんな印象をお持ちでしょう。ルーティンというとなんとなく会社から指示された単純作業を、指示されたとおり繰り返すだけのどちらかといえばネガティブなイメージを抱くのではないでしょうか。ところが経営学的にいうと、ルーティン化は、イノベーション(とくにインクリメンタル⦅漸進的⦆イノベーション)に欠かせない重要な要素なのです。
組織でも一個人であっても、情報を処理する容量にはおのずと限界があります。企業がなにか新しい取組を始めると、最初のうちは慣れない仕事に多くの時間を要します。そのままにしておけば、次になにか新しいことを始めようとしても、キャパオーバーでとてもそんな余裕はありません。そこで登場するのがルーティン化です。
ルーティン化することにより、そこに余力(スラック)が生まれ、新たな取り組み(イノベーション)を始めるきっかけができます。海外の道路を地図なしで走ることは容易ではありませんが、交通ルールを理解し、カーナビの指示に従って走れば、車内で音楽を楽しみながらでも運転ができます。
ルーティンワークとは、単なる繰り返し作業ではなく、手順を標準化させ、余力を生じさせるための取り組みなのです。トヨタの改善や無印良品のマニュアル(無印は、様々なものをマニュアル化し、そのマニュアル化する過程で組織学習を促す)は、その良い一例でしょう。極度のルーティン化は組織を硬直化させ、かえって新たな取り組みを受け入れづらくさせてしまうことも確かです。しかし、柔軟に活用すれば、漸進的なイノベーションを加速させることにつながるのです。
参考:ハーバードビジネスレビュー2015.10,2016.3〜4:入山章栄「世界標準の経営理論」
(文責:髙山正)