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奇跡の生還を果たした「進捗の法則」

ハーバート・ビジネススクール教授のテレサ・アマビールは、2011年に仕事のやる気に関する画期的な論文を発表しました。彼女は、プロジェクトに参加したビジネスマン236人分の1万2千近い日誌を分析し、何が社員のやる気を高めるかを突き止めたのです。それは「有意義な仕事が進捗していると認識できること(進捗の法則)」でした。「進捗」と言われてもピンとこない方もいるかもしれません。しかしそれはとても強力に人々に影響を与えます。そのことをもっともよく表すあるエピソードを紹介しましょう。

若き登山家ジョー・シンプソンは、体感温度マイナス60度の極寒のなか、空腹に耐えながら腕のみで一歩また一歩と、ひとり雪面の上をはいずっていました。彼は標高6,344mを誇るシウラグランデ山の氷壁から落下し、右膝を骨折する大怪我を負ってしまったのです。彼は死んだものとされ、深いクレパスの中にひとり取り残されました。その後、なんとかクレパスから脱出できた彼でしたが、骨折した足で一人下山できる可能性ほぼゼロです。それはつまり死を意味します。そんな絶望のなか、彼が生き残りのためにとった戦略こそがまさに「進捗の法則」だったのです。

彼は目印となる岩を見つけると、腕時計のタイマーを20分にセットします。「あの岩場に20分以内に到着しよう。それが自分がやるべきことのすべてだ」そう決心すると、目標に向かって突き進みました。そして目的地まで辿り着くと、また新たな目標を設定する、それを何度も何度も繰り返したのです。ミニゴールを達成するという小さな成功は、彼にパワーを与えました。その歩みはわずかでしたが、確実に前進していました。そして5日目の夜、ついに彼の眼前に仲間たちの待つベースキャンプが現れたのです。彼は、奇跡の生還を果たしたのでした。

私たちは、途方もないプロジェクトや膨大な仕事を目の前にすると、怖気づいたり尻込みをしてしまいます。しかし、実行可能な小さな単位に分解し、ひとつひとつをクリアしていく小さな成功体験は、やる気と活力を与えます。確実に仕事が進捗していると認識することができます。そしてついには、大きな目標をも達成させるのです。

(文責:髙山正)

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