旅館「元湯陣屋」その3(週休3日)
今回で「元湯陣屋」V字回復シリーズは最後となります。4代目が就任したと同時に旅館業経験のない4代目奥様も女将に就任しました。就任時は2歳の男の子と生まれたばかりの女の子を抱えながら必死に4代目の改革を女将として支えました。しかし、慣れない旅館業、負債のプレッシャー、改革に対する重圧、さらに子育てまで重なり3年目を迎えたあたりで精神的に限界を迎えました。そこで「元湯陣屋」がとった策は、旅館業としては異例の週休3日でした。月~水曜日までを休館とする策は銀行からも反対にあうなど相当勇気のある決断でした。
旅館が休館日を設ける5つの理由
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- 女将や料理長の不在日がなくなり常に最高の環境でお客様をおもてなしすることができました。
- 以前は疲れ切って1日寝るだけの休日でしたが、家族と過ごす時間を大切にするなど私生活が充実したため、スタッフのモチベーションが高まりました。
- 売上の少ない平日を休館日にすることで、人件費、水道光熱費などの経費削減につながり結果として利益増加となりました。
- 休館日明けの午前中はまだお客様がいません。この午前中に一斉研修を行うことによりさらに接客の質に磨きをかけられるようになりました。
- お客様に不快な思いをさせることなく館内のメンテナンスを行えるため、以前に増して居心地の良い空間を提供できるようになりました。
このため、休館日を設けたにもかかわらず、営業日を充実させることで結果的には売り上げ増加となりました。
人材不足が叫ばれる介護業界でも似たようなケースは起こりうると思います。このような時は、いったん立ち止まり常識にとらわれず冷静に現状を分析することで何らかの改革案を絞り出すことが求められます。元湯陣屋は追い込まれた中で大胆な発想により窮地を脱することにに成功しました。
【文責:竹内光彦】