想い出作りの提供
先日、テレビ東京で放送されている「ガイアの夜明け」という番組の中で、心に残るシーンがあったのでご紹介します。
三重県四日市市にある「いしが在宅ケアクリニック」は全国トップクラスの、年間300人ほどの患者さんの最期を在宅で看取っています。ある日、末期の大腸がんと診断された68歳の女性の患者さんが訪れました。主治医である石賀先生は日に日に弱っていく患者さんに対し、生きる力が湧くために「桜を見に行く」という目標を与えます。そして、満開の桜のもと、ようやく自転車に乗れるようになった孫の姿を見るなど、家族そろって過ごしたこの日は患者さんにとってかけがえのないものになりました。
数日後、患者さんは旅立たれましたが、在宅で看取りに関わった家族はやり切った感を持たれたことと思います。
介護事業者もこの、ドラマのワンシーンのような出来事をプロデュースできたら素晴らしいことと思います。もちろん、主治医の先生との念密な打ち合わせ、急変した場合の対応策など課題は数多くあり、全く同じ状況は難しいと思いますが、本当のニーズを掘り起こすヒントになるのではと思います。
今、介護が必要な方向けのトラベルヘルパーサービスなどの付き添いサービスを行う業者も増えています。しかし、たとえば、「温泉旅行に連れていき最後の親孝行をしたい」と考えた場合、「身近な信頼できる事業者が思い浮かばない」という方は多いのではないでしょうか。そして、最後の親孝行のためなら、たとえ海外旅行並みの費用がかかる保険外サービスでも、サービスを受けたいという利用者さんはいるのではないかと思います。
付き添いサービスを提供はするのではなく、「最後の想い出作りを提供する」という視点に立つことにより利用者家族の気持ちがわかり、同じサービスでもアプローチの仕方が変わることと思います。
【文責:竹内光彦】