教育訓練と長期雇用
世界同時不況の影響で、「派遣切り」「雇い止め」等のニュースが連日報道されています。そういった企業では、必要に応じて労働者を市場賃金で雇用し、逆に不要になれば解雇するといういわば「変動費」として捉えている傾向があります。そういった意味では派遣社員や契約社員は雇用調整しやすい労働力といえます。しかしながら、労働者を費用ではなく資本(人的資本)と捉える考え方もあります。
これは、企業は「教育訓練費」という費用を労働者に投資し、これにより熟練労働者を育て、その投資費用を上回る高い生産性を得るという経済行為を指します。研修費や研修期間中の賃金を企業は負担しますが、教育訓練により高まった熟練労働者の生産能力より低い賃金を支払うことによって、その差額を収益として企業は回収するのです。労働者に対しても訓練を受けなかった場合よりは高い賃金を支払います。訓練を受けることによって、生産性が高まり、後でより高い賃金を受け取ることができるわけです。日本型に置き換えるならば、若いときは給料が低いが経験を積むと給料が高くなるという年功序列賃金にも似ています。
ただし、このシステムは教育訓練から訓練後の投資収益回収期間まで、長期にわたり同一企業で働くことを前提としています。途中で辞められてしまっては、お互い収益を分かち合うことはできません。
※厳しい経済状況下において生産調整をする必要から、一時的に休業させる場合や、代わりに教育訓練を行うような場合は「中小企業緊急雇用安定助成金」として国から助成金が支給される制度があります。平成20年12月からの新しい制度です。詳しくは当事務所社会保険労務士までご相談ください。