長所を伸ばす
部下の人材育成や社員教育をするとき、皆さんは、どのような点に注意して行っているでしょう。殆どの方が、部下のミスや欠点を指摘し、その改善をするように指導しているのではないでしょうか?どうしても、人の短所に目がいき、そこを何とかしなくてはと思ってしまうのは人間の性です。確かに、致命的な欠点やミスがあれば、最低レベルまで改善する必要はありますが、それが改善されたからといって、生産性が上がるとは限りません。それよりも、既に良いところである長所をさらに伸ばすことの方が、生産性向上につながり、欠点を改善することより簡単なことなのです。
貿易論において「比較優位」という考え方があります。「それぞれの国が別々に産業を行うより、ある農業を得意とするA国と工業を得意とするB国がそれぞれ得意とする自国の産業に特化し、足りない部分は貿易によって賄うことで、貿易をする前より生産性が向上し、双方にとって利益がある」という経済理論です。細かな理屈はさておき、ここで重要なのは「得意(長所)とする産業に特化する」ということです。そして、足りない部分(短所)は別の国に補ってもらえばいいということなのです。
相対的に能力が低い社員であっても、そのなかで比較的得意とする長所があるはずです。その長所に注目して、そこを伸ばす人材育成が必要なのです。その他の欠点は組織で補えばいいのです。もっといえば、苦手なことをやらなくても済むようにするのです。逆に、相対的に能力の高い社員でも、そのなかで特に得意とする長所をさらに伸ばし、超一流まで育てることが、圧倒的な差別化につながります。また、指導する側も指導される側も当たり前ですが、欠点を指摘されるより、良いところを褒めて伸ばす方が気持ちのいいものですし、上達の速度も速いはずです。
「不得手なことの改善にあまり時間を使ってはならない。自らの強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーと努力を必要とする。」(P.F.ドラッカー)