「人」で差別化する
どこでも買える既製品や、こだわりのないコモディティ化した商品を購入するような場合、何か特別の理由がない以上、1円でも安く購入しようとするのが合理的な経済人です。そういった商品を扱う市場は価格競争となり、資本力がなくコスト劣位な企業は撤退を余儀なくされます。ただ、そういった市場においても製品以外の付加価値を高め、利益を上げている企業があります。
高知に「ネッツトヨタ南国」という顧客満足度日本一の自動車ディーラーがあります。値引きも殆どせず、安く買いたいなら、すぐ近くにある別のトヨタディーラーに行けばよいことを顧客は知っています。それでも、顧客はネッツ南国で買います。それは「人」が違うからです。有能なサービスマンが他社にはない信頼の厚いサービスを顧客に提供しているからです。
スターバックスは、コーヒーカフェという既に成熟した市場で成功を収めています。それには様々な理由がありますが、その一つにやはり「人」があります。スターバックスではスタッフのことを「バリスタ」(コーヒー抽出技師)と呼び重用しています。多くのチェーン飲食店と違い、スターバックスは殆どが直営店です。それは、スタッフのレベルを落とさないためともいわれています。そんなスターバックスの「バリスタ」のサービスが高いことは皆さんも既知のことだと思います。
「人」で差別化することは、一朝一夕で実現できることではありません。それゆえに、持続的な競争優位の源泉になりえます。なぜなら簡単に真似ができないからです。ゆったりとしたソファーやおしゃれな制服はお金があれば真似できるかもしれません。しかし、「人」まで真似することはできません。採用のこだわり、人材育成のノウハウ、組織文化といった暗黙知の部分は他社からは分からないからです。
これだけ「モノ」が溢れている現代において、今まで以上に「人」がキーとなってくることは間違いないでしょう。