仕事に目的を持たせる
昔、ローマの刑罰の中に、穴を掘っては埋め、埋めてはまた掘るということを延々と繰り返させるというものがありました。これが罰になる理由は、単なる肉体的苦痛だけではなくて、全く意味のないことを繰り返しさせられることに、人間は耐えられないからで、なによりも精神的苦痛を与えることだそうです。
例えば、短期のアルバイトにある組み立てラインの仕事をさせます。短期のアルバイトだから、とにかく部品の取り付けだけをひたすら間違えずにやればいいと繰り返し作業させることは、そのアルバイト社員にとっては時間の長いつらい仕事と感じるでしょう。なんとか仕事に目的や意義を見出そうとしますが、仕事自体にはそれがありません。すると、賃金や時間に目的を求めようとします。「これだけやれば、いくら稼げる」「あと何時までやれば終わる」ということになるのです。そうなれば、賃金以上の仕事をしようとはしませんし、仕事が途中であっても時間になれば帰ってしまいます。
ある派遣会社で真面目に一生懸命働く社員がいたそうですが、その派遣社員は、自分が作っているこの携帯電話の部品がどこのどういった部分なのかを聞いてきたそうです。そして、ある日みんなで買い物に出かけた際、お店の携帯電話販売コーナーで、この携帯電話のこの部分は私がつくっているのよと友達に自慢していたそうです。
作業手順を教える前に、たとえ短期のアルバイトや短期の派遣社員であっても、自分たちのやっている仕事はどういったもので、どんな目的があり、それがどう貢献しているか、その仕事の目的や意義を教えることは、労務管理上とても大切なことといえます。