経営理念は役に立つのか?
経営理念や社訓またクレドなど、名称は違えど様々な指針・方針を掲げている企業はたくさんあります。それらを額に入れ復唱させ、なかにはカードにして携帯させている企業もあります。はたして、これらの行為は、何かしらの良い影響を従業員に与えているのでしょうか。それとも単なる経営者の自己満足なのでしょうか?
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の学生を対象に、あるおもしろい実験が行われました。グループを2つに分け簡単な数学のゲームをしてもらいます。ゲームの正解率に応じて報酬が支払われるというものです。実はこのゲームでは、絶対に他人に見つかることなくカンニングができるよう細工がされていました。
ゲームを行った2つのグループの内、一方のグループでは案の定、程度の差はあるにせよ何かしらのカンニングが行われました。しかし事前に「ある」ことをした、もう一方のグループでは全く不正が行われませんでした。その「ある」こととはゲームの開始前にキリスト教の「十戒」を思い出し書き出すというものでした。事前に「十戒」を思い出させただけで不正がゼロになったのです。しかも「十戒」をすべて思い出せた人はほとんどいませんでした。なかには2、3問しか答えられなかった人もいました。それにもかかわらず、不正がなくなったのです。何かしらの道徳的行動基準を思い出すだけで、人は正直になれるということです。
会社の「経営理念」を「十戒」に置き換えてみたらどうでしょう。なかには、ただ何となく経営理念を復唱したり、見ているだけの従業員もいるかもしれません。それでも、それを思い出すだけで良い効果が表れるということなのです。
経営理念があるけれど机の奥にしまい込んでいるのであれば、事あるごとに復唱させてみてはどうでしょう。もし経営理念をつくっていないのであれば、この機会につくってみても決して損はないと思います。