将来の退職金より目の前の現金
突然ですが、質問です。次の二つのうちどちらがいいですか?
A)100日後に100,000円もらえる
B)103日後に101,000円もらえる
この質問に多くの人はBを選ぶと思います。しかし、次の質問ならどうでしょう?
C)今すぐ100,000円もらえる
D)3日後に101,000円もらえる
いかがでしょう。この質問に変えると、Cを選択した方が増えたのではないでしょか。しかし、どちらの質問も同じ3日間の違いです。この現象を行動経済学で双曲割引といいます。同じ3日で1,000円の違いなのに、目の前に来ると人はせっかちになってしまします。遠い将来のものは価値を低く見てしまい、100日も103日もどちらもたいして変わらなく感じてしまいます。将来のことを現在に割り引いて価値を低く算定してしまうのです。
これは退職金にも当てはまります。以前、松下電器が退職金の前払い制度を導入しました。そうすると、44%が「前払い」を選択し、その割合は年々増え続け、4年後には60%を超えました。退職時にもらえる退職金の方が割増されますし、税制面や社会保険料などにおいてもかなり優遇されていいるにもかかわらずです。将来の高い退職金より、いくらか目減りしてもすぐにもらえるお金を選んだのです。
人はキリギリスではないですが、老後に備えてお金を十分に蓄えておくのは、どうやら苦手のようです。ですから、企業としてきちんと従業員のために退職金を積立ててあげる必要性があるということですが、逆にいうと、将来もらえる退職金は、従業員にとって働くインセンティブ(刺激)としての効果は薄いということになります。退職金をインセンティブとして機能させたいのであれば、現在の積立額を年に1度くらいは明示した方がいいです(なかには、それを見て退職してまう人もいるかもしれませんが、それは少数派でしょうし、そんな従業員はこちらからお断りです)。特に中退共で積立しているのであれば、毎年積立の明細が届きますので従業員に、ちゃんと手渡してください。こっそり明細をみながらニヤニヤしているかもしれません。