顔を付け合せたコミュニケーションしてますか?
皆さん「トランザクティブ・メモリー」(以下、TM)という言葉をご存知でしょうか?直訳すると「対人交流記憶」となりますが、組織内の情報の共有化において「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバーが『他のメンバーの誰が何を知っているのか』を知っている」状態という意味です。〇〇のことなら〇〇さん聞けば分かるということを組織間で共通の情報として認識されいるということです。そしてこのTMの高い組織は生産性が高く、イノベーション(革新)の起こる確率も高まるというのが組織学習研究において最も重要なコンセプトとなっています。
TMを高めるには、メンバー間のコミュニケーションを増やすことなのですが、電話やメール、チャットではなく直接対話のみにその効果が表れるのです。イリノイ大学のアンドレア・ホリングスヘッドの実験研究において、①会話も顔も見ることができるグループ②会話はできるけど顔を見ることができないグループ③会話はできないが顔を見ながら書面により意思疎通できるグループの3つに分けて共同作業をさせたところ、最もパフォーマンスが悪いグループは②でしたが、①と③のパフォーマンスにほとんど違いは見られませんでした。要は、顔を合わせていることが生産性に重要だということです。言葉以外の表情や目、しぐさで「誰が何を知っているか」を即座に判断しているのではないかと考えられています。
そうすると、部署ごとに隔離されたオフィスではく、仕切りのない平場オフィスやグーグルのようないつでも気軽に飲めるカフェスペースがコミュニケーションには有効といえます。オフィスに限らず、部門間や上下関係を超えた社内運動会のようなイベントや忘新年会などの懇親会もこのTMを高めるコミュニケーションといえます。しかしながら、仕事と直接関係のない任意の懇親会などには、一切参加しない割り切った社員がいるのも事実です。とはいえ、会社行事も参加してみれば楽しいものですし、普段あまり会話のない他部署の人と交流を持つことはそれだけでも刺激になります。今一度、社内行事について見直してみてはいかがでしょうか。
参考文献:入山章栄「ビジネススクールでは教えてくれない世界最先端の経営学」