医療機関の消費税問題
東日本大震災における復興財源確保のために増税論議が飛び交っていますが、中でも消費税率のアップは、医療機関に及ぼす影響が大きいと予想されます。
消費税の仕組みは、事業者が消費者より「預かった税額」から「負担した税額」を控除して税務署へ納めることを基本とします。最終負担者は、消費者ということになりますが、実際に納税するのは医療機関や医薬品メーカー等といった事業者が流通の各段階にて分担することとなっています。
ただし、保険診療を行う医療機関においては社会保険診療収入が消費税法上、政策的に非課税となるため患者負担はなく「預り金」が発生しないまま、医薬品等の購入時には税額負担のみ発生するという事態となります。税額計算の上では、課税の対象となる自由診療収入等からの「預り金」から控除される税額は、総収入に対する課税対象収入の割合(課税売上割合という)に応じてのみ税額が控除されるに止まります。つまり、保険診療中心の医療機関においては、ほとんどが税額控除されないということです。そのため、控除されない部分は「損税」として医療機関の負担コストとなっているのが現状です。
消費税率がアップして、診療報酬の増額改定も行われなければ、増差税額がそのまま医療機関の更なる負担となりますので、今後の経営計画の策定においては、「損税」となる負担コストを織り込んで経営戦略を構築していくことが求められることとなります。