会社の承継 その8 後継者の社内における教育
後継者の社内教育は、「現場体験」と「思想・理論教育」をバランスよく行うことが重要です。
後継者教育では現場体験が極めて重要です。まずは末端で働く社員の苦労を、わが身をもって知ることです。共に働き、社員の苦労を知らずして、本物の経営者になりようもありません。一緒に泥水をすすり、苦労を共有した社員こそ、自分が経営者になったときに、無理も聞いてくれるのです
また現場は会社組織の最前線ですから、営業であれば、顧客がどんなニーズを持っているかを肌で感じ、製造であれば現場の問題点や自社の強みの源泉を体験することができます。いわば自社のありようを、強みも弱みも合わせて、現実感をもって知ることができるのであり、現場体験がないと、ただの頭でっかちの人間になりがちです。逆に十分な現場体験は、現場と社員を、現実感を持って慮れる優れた経営者になるための、これとない肥やしとなります。
だから多くの後継者は会社のエンジン部分である営業・製造をローテーションするのです。
ただ、当人が「優れた経営者になるための一体験」であることを忘れ、現場に埋没してしまうと、いつの間にか労働組合の委員長のようになってしまったということになりかねません。
ですからあわせて、会社全体と会社を囲む経営環境を見回し、舵を切るための思想や理論の教育が必要なのです。現場に埋没しすぎると、大局観を失い、小さくて狭いものの見方をしがちで、やり方、攻め方が単調になりがちです。対象を大きく、そして客観的に捉え、大胆に攻めていくための思想や理論を、創業者である社長が自ら教えていくのです。
当事務所でも、また夏ごろ経営者のための理論をセミナーいたします。よければお付き合いください。
(経営者会報 2008.10月号 亀井英孝氏の記事を参考にしました。)